Project

活動の概要

ボスニア・ヘルツェゴビナのモスタル市で活動しているスポーツアカデミー「マリモスト」のサッカー教室では様々な民族の子どもたち約80人が一緒になって一つのボールを追っています。Little Bridgeは日本からマリモストの運営支援・資金援助を行いながら、ボスニアと日本の子どもが相互に交流するスタディツアーを開催しています。

民族の分断を乗り越えるスポーツアカデミー"mali most"

ボスニアのモスタル市では、民族紛争の影響から同じ地域に住む民族の居住地、学校、スポーツクラブなど、日常生活が分かれた状態が続いています。同じ街に住みながら、民族の間に交流がほとんど見られないのです。

私たちはスポーツなら民族が分断された現状を変えることができると考えました。どの民族の子どもも通えるスポーツアカデミー"mali most"を街の中心に設立し、異なる民族の子どもが一緒に参加できるサッカーアクティビティを開催しています。サッカーサッカーアクティビティで多民族の子ども同士が友達になることをきっかけに、保護者やアカデミーに関わる大人も異民族と知り合い、民族の垣根を超えた交流が街に次々と生み出されています。

袋小路にはまってしまった ボスニア

内戦終結から20年がたっても、ボスニアの民族対立は解決への糸口すらつかめない状況が続いています。Little Bridgeが活動しているモスタル市では、街の真ん中を流れる川を境に民族が別れて居住し、民族対立が原因で10年近くも民主的な選挙を実施できていません。

対立の影響は子どもたちにまで及んでいます。住む地域や学校、スポーツクラブ、ナイトクラブなど街の施設が民族ごとに別れているため、子どもたちは他の民族にほとんど出会うことなく大人になってしまいます。

mali mostの活動内容

mali mostには、クロアチア系民族やボスニア系民族、セルビア系民族、少数民族の子どもが80人所属し、週5回開催されるサッカーアクティビティに参加しています。mali mostで開催されるアクティビティは、子どもたちが一緒にスポーツを楽しみ、民族関係なく友達になれる貴重な場となっています。

mali mostが正式に開校したのは、2016年10月。開校当初はコーチや子どもの募集に奔走する日々でしたが、アカデミーの活動は徐々に安定して行えるようになってきました。現在はサッカーアクティビティとして、練習やトレーニングマッチに加え、地域で開催される公式戦にも参加するようになっています。不定期でサッカー以外のスポーツアクティビティ、英語や音楽のワークショップも開催しています。

生まれた時から他民族への偏見や差別意識を持っている子どもはいません。スポーツアカデミーmali mostは、子どもたちが他民族の子どもと直接話し、触れ合い、友情を育める場の提供を続けていきます。

mali mostの運営は一般財団法人 日本国際協力システムの助成金を受けて行われています。

mali mostが描く未来

mali mostとは現地の言葉で「小さな橋」を意味し、このアカデミーが民族の心の懸け橋になるという想いを込めています。

私たちはmali mostで育まれる民族を越えたつながりが、アカデミーに通う子どもの友達や家族、地域社会に広がってほしいと願っています。mali mostに通う児童の保護者の中には、紛争中を兵士として過ごし、紛争終結後の20年間一度も他民族と話さなかった人もいます。その人は子どもがmali mostに通ったことをきっかけに他民族の人と話すようになり、今ではカフェに一緒に行くような親しい間柄になりました。mali mostを通して、保護者同士の交流も活発に行われるようになっています。

2018年7月には民族を越えたつながりを地域社会に広げるため、サッカー大会「Mali Most Cup 2018」を開催しました。3つの年齢カテゴリーのサッカーチーム計34チームが集まり、68もの試合を行いました。モスタル市ではサッカーチームも民族ごとに分かれていますが、この大会にはどの民族のチームももちろん参加し、児童約400人に民族を越えた交流の場を提供しました。

モスタル市に残る民族の対立を変えることは容易ではありません。Little Bridgeは無限の可能性を秘めた子どもたちと共に歩み、モスタル市やボスニア社会の少しでも良い未来を一緒に創っていきたいと考えています。

日本とボスニアが交流するツアー

スタディツアーでは、日本とボスニア・ヘルツェゴビナの子どもたちが一緒にスポーツを楽しみます。子どもたちは言語の壁に苦労すると予想されますが、その中でもスポーツを一緒に楽しむ仲間として相手を理解しようと努めることでお互いの共通点が見出され、理解と寛容の精神を育むことにつながります。また、日本とボスニアの子どもがお互いの文化や歴史に触れ、多文化共生や平和の意義について考える機会を提供しています。

スタディツアー は、公益財団法人 関西・大阪21世紀協会の助成金を受けて行われています。

ボスニアで起きた民族紛争

元々ボスニアでは、様々な民族が仲良く暮らしていました。

しかし1992年に民族が領土を取り合って争う内戦が勃発。瞬く間に熾烈な武力衝突が国内全土を覆い、「民族浄化」と呼ばれる残虐行為が繰り返されました。内戦は1995年に終息しますが、国内全体の死者は20万人にも上り、国のいたるところに深刻な民族対立を残しました。